進化の法則を知れば先が読める

文化文明も、それ以外の全て、生物無生物にかかわらず、つまり、有形無形にもかかわらず、進化するものだと、私は考えている。 そこで、今回、特に、無形の文化文明の進化を提示したいと思い、この本を描き上げた。

第十一章: 科学技術中心の文化文明 (その二)

[より普遍性を高めた科学知識]
確かな証拠をもって証明するという実証を重んじる科学的知識は、いくつもある宗教を超えて、更に普遍性を備えた、高めた世界解釈書となった。特に、17世紀に誕生した、ニュートンは、近代科学文明の成立に多大の影響を与えた。
とは言え、道徳、倫理という、科学技術ではカバーできない領域がまだまだ広く残っている。だから、正確には、知の主役という地位の交代はあったが、科学技術からでは知識を受けいられない分野が広く残されている。
[科学的知識は世界共通教義]
宗教教義では、民族により、信仰者・宗教者によって異なるが、科学的知識は、世界共通教義とも言える。知識という面では、普遍性が高まった。ということで、科学技術によって、西洋は、世界を征服したと言っても過言ではない。日本の昭和時代の繁栄や、今の中国の隆盛も、その西洋の科学技術がもたらしたものである。とは言え、まだまだ宗教が最高権威である、国々、地域もかなり存在する。これが世界を複雑にしている。争いの原因ともなっている。

3・11以後の科学・技術・社会

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日経テクノロジー展望2020 世界を変える100の技術

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  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 単行本

第十一章: 科学技術中心の文化文明 (その一)

第十一章: 科学技術中心の文化文明
[科学技術中心の文化文明]
時代の変化から生まれた宗教的・社会的大変動という混沌から、科学技術中心の文化文明が西洋に起こった。かくて、西洋主体に生まれた科学知識に従って世界を解釈する時代が到来した。
[それでも地球は動く]
科学技術中心の文化文明の到来を呟く言葉が、”それでも地球は動く”(byガリレオ・ガリレイin17世紀)である。これが、世界解釈の手段の転換(宗教教義中心から科学技術知識中心へ)を象徴する言葉である。
[カトリック教会公認の天動説]
2世紀に、プトレマイオス(古代ローマ天文学者、数学者、地理学者、占星術師)によって体系化された天動説は、13世紀からカトリック教会公認の世界観であった。
[天動説とは矛盾するデータが蓄積]
しかし、宇宙を観察した事実を積み重ねていくと、天動説とは矛盾するデータが蓄積されてきた。そのことによって、聖書(宗教)や宗教が公認する解釈よりも、科学的知識の方を信じる人々が多くなった。

3・11以後の科学・技術・社会

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日経テクノロジー展望2020 世界を変える100の技術

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  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 単行本

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その四)

[民族的神話]
ほとんどの民族では、世界を解釈するための、解釈を統一するための、神話が生まれた。神話とは、現代的に言えば、思考・思想を統一するための教科書である。世界を理解するための参考書であった。日本も例外ではない。仏教が伝来するはるか前から、神話が存在した。それはまた自らを権威づける根拠づけとしても使われた。
[仏教の衰退]
現代日本国家は、法律の厳格な適用によって人民を統治する法治主義国家である。過去の中国では、紀元3世紀頃には仏教が盛んで、それを統治手段としてい利用していた。が、その後、為政者が、儒教に切り替えたので、仏教は衰退した。このように統治手段は、宗教である必然性はなかった。
[聖書は世界解釈書]
キリスト教の聖書も、世界解釈書である。また、それは、キリストによって、ユダヤ民族だけの教科書ではなく、民族を超える普遍性を与えられた世界観をも提示した。
[時代変化についていけない宗教教義]
宗教教義では、時代につれて、条項が追加されるかもしれないが、教祖が直接提示した根本部分は不変である。だが、諸行無常である。今まで述べてきた考えを当てはめると、環境・時代の変化についていけない生物は、淘汰されるのが自然哲理である。

お坊さんが教える「悟り」入門 (お坊さんに学ぶシリーズ)

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  • 作者:長谷川俊道
  • 発売日: 2014/03/20
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第十章:宗教を中心とした文明文化 (その三)

[アヘン戦争]
中国でのアヘン戦争が挙げられる。だが、アヘン戦争自体は、宗教の衰退と直接関係はない。ただ東洋(文化)の西洋(文化)への敗北を象徴する出来事である。日本では、それに匹敵するのは、黒船の来航であろう。アヘン戦争や黒船の来航は、西洋の科学技術の圧倒的優位性を見せつけるものであった。ここから西洋の東洋への優位性が本格化していった。更には、西洋の科学技術が世界を変える、世界を支配する先駆け的出来事でもあった。
[魔女狩り]
魔女狩りが発生したのは、当時のヨーロッパを覆った宗教的・社会的大変動が、人々を精神的な不安に落としいれたことと同時に、台頭してきた市民のパワーと衰えかけた権力者の意向が一致し均衡したことが原因だと見られている。市民は自らが持ち始めたパワーを使う対象が、残念ながら、有効な方向ではなかった。市民はまだ力の行使に慣れていなかった。あたかも、腕力、知力のある者が、狭い視野に留まり、それらを弱者に誇示する姿に似ている。

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その二)

[その頃日本では]
日本列島では、2〜3世紀に存在したとされる国のひとつ、邪馬台国(約30の国からなる日本の都)は、卑弥呼(呪術を司る巫女のような人物)が治める女王国であった。この状況も、知の中心に宗教があることを示している。
[前期と後期の宗教]
宗教を中心とする文化文明は、前期と後期に分けられる。前期は、支配階級を権威づけるための宗教であった。支配する根拠づけとしての宗教。後期は、被支配階層を統制する手段としての宗教。つまり、道徳としての宗教。それが、市民自らが自らを律するための倫理としての宗教へと根付いた。
西欧では、その結果、ユダヤ教(戒律)からキリスト教(愛)へと切り替わった。東洋では、戒律重視から念仏重視の大乗仏教へと切り替わった。
[宗教の文明文化の枯衰]
早々と、宗教の衰退の話に入るのであるが、それは、内容を紹介することが中心ではなく、文化文明の変遷(栄枯盛衰)が中心テーマだからである。ということで、宗教中心文化文明の枯衰を象徴的に示す出来事となれば、西洋では魔女狩り(15〜18世紀)である。時代の混沌に明るい未来を指し示すことができていない。混沌の度合いを深めてさえいる宗教の末期的姿である。

図解 世界5大宗教全史

図解 世界5大宗教全史

  • 作者:中村 圭志
  • 発売日: 2016/06/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
日本宗教史 (岩波新書)

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教養として知っておきたい 「宗教」で読み解く世界史

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  • 作者:宇山 卓栄
  • 発売日: 2020/08/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
宗教で読み解く日本史

宗教で読み解く日本史

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その一)

第十章:宗教を中心とした文明文化
これまで(第九章で)は人類以前の知を見てきたが、ここからは、人類にとっての主役となる知の交代劇を見ていきたい。
[仏教の誕生]
インドでは、仏教が誕生した背景に、従来の盲信的な原始的宗教から脱しようとした、ことがあげられる。それは、都市国家がある程度の成熟をみて、社会不安が増大し、従来のアニミズム的、または民族的な伝統宗教では解決できない問題が多くなった、ことによる。つまり、時代背景(環境)の大きな変化に、それまでの知(民族的な伝統宗教)がついていけなかった。納得できる解決策を提示できなくなった。要するに、新しい知が要請されていた。
[宗教の文明文化の栄盛]
宗教中心の文明文化の繁栄を、象徴的に表す出来事がヨーロッパで起こった。それが、4世紀、キリスト教の公認・国教化である。テオドシウス帝は380年にキリスト教ローマ帝国の国教と宣言した。 宗教を知の中心に据えた。

マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで

マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで

  • 作者:武藤 泰明
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
文明史のなかの文化遺産

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  • 発売日: 2017/06/08
  • メディア: 単行本
土の文明史

土の文明史

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その五)

[赤ん坊の脳]
だから、人間においても、赤ん坊の段階では、誕生前からすでに大脳新皮質が存在していても、その部位には主役となって判断できるほどの体験知(後天的情報)が蓄積されていない。つまり、赤ん坊段階での大脳新皮質は空っぽの貯金箱にすぎない。
[爬虫類脳から機能する]
故に、赤ん坊の場合には、生得的知に従って働く爬虫類脳が主役となる段階から人生をスタートすることになる。そして、後天的な体験によって獲得された知が加味された本能に従って働く旧哺乳類脳や、後天的な体験がほとんどを占める新哺乳類脳が順次主役に立つ。つまり、大脳辺縁系で発生する欲求や情動を、大脳新皮質の知性や理性がコントロールする。それにはたくさんの経験を必要とする。
[本能からの離脱度]
旧哺乳類脳は、自由度がかなり低い(本能的知から離れられない)が、新哺乳類脳は、圧倒的な自由度を誇る。この圧倒的な自由度が、動物的本能からは、考えられないような、行動をしでかす。本能の統制から解放された新哺乳類脳は、あらゆる非道、残虐なこともやってのける。天使にも悪魔にもなれる脳部位である。
[内装は下から順に]
なお、幼い頃に、感情や快・不快の価値判断的な体験(旧哺乳類脳に蓄積)をあまり積まずに、早期に知的体験(新哺乳類脳に蓄積)を積み過ぎると、冷たい知的(理詰め)な大人になる可能性も高い。諸刃の剣である。

本能の力(新潮新書)

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第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その四)

[大脳新皮質が担う文明文化]
この本のテーマである文明文化を創造する能力は、主にこの大脳新皮質が担う。人間の場合には、大脳新皮質が主役になることができるが、哺乳動物である犬や猫では、大脳新皮質が主役の座を奪うことができない。それは、大脳新皮質が脳全体で閉める量的な違いから来る。量が質に転化するには、分量が問題となる。
[本能は旧哺乳類脳から]
本能とは何なのだろうか。その動物の生得的知と、生まれてから獲得した後天的情報を合成することによって生み出し、総合的に判断した結果手にした知を本能という。その知を生み出す脳部位が旧哺乳類脳であり、犬や猫は、その旧哺乳類脳が主役となっている。
[脳の主役交代]
脳においても、主役の交代という形での進化が行われている。たぶん、主役の交代は、機能別脳内容の量的な多さ・大きさが決定するのだろう。

三つの脳の進化 新装版

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脳科学と心の進化 (心理学入門コース 7)

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第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その二)

[道徳とは]
では、道徳とは一体何なのだろうか。それは、大きな集団である社会や共同体において、より健全で快適な共同生活を送るために、その構成員の大多数によって認知共有され、守るべき、あるいは、実行されるべきと考えられている態度の規範、行動の指針である。
[本能的知]
動物の場合には、種が共有する、生まれながらの、強力な本能的内在的知を持ち合わせている。ところが、人間の大脳新皮質には、生まれながらの内在的知を持ち合わせない。よって、外からの、規範、道徳、ルールなどの、共通認識が必要不可欠となる。

本能の力(新潮新書)

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第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その一)

第九章:文化へ流れ込む知の源泉
[宗教中心の文明文化]
釈迦は紀元前5世紀頃に、キリストは紀元元年(?)に誕生した。その頃に、宗教(キリスト教、仏教・儒教など)が中心の文明文化が生み出された。世界を解釈する方法・手段として、宗教教義が誕生していった。また、抱え込む集団の規模が大きくなったので、統一・統制するための手段が必要となった。
[最も古い埋葬]
最も古い埋葬の例は、ネアンデルタール人のものがよく知られている。すなわち、埋葬の起源はおよそ10万年前にさかのぼる。これは死者に対して特別な意識を持っていた可能性を示唆する。 宗教の萠芽である。だとすれば、宗教が集団の統一・統制するためだったとも言い切れないが。
[神から与えられた十戒]
がしかしながら、キリスト教では、十戒という十の戒律が提示された。モーセが神から与えられたとされる10の戒律である。その中には、あなたの父母を敬えとか、殺してはならないとかの、道徳的なことも述べられている。キリスト教以外でも、多くの宗教は、道徳的規範の指示を教典に含んでいる。となれば、やはり集団の統一・統制が大きな目的だと感じられる。

マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで

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  • 作者:武藤 泰明
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)