[棲み分け理論]
日本の生態学者、文化人類学者今西錦司は、「棲み分け理論」を提唱した。具体例で示せば、カゲロウ類の幼虫は渓流に棲むが、種によって棲む環境が異なると同時に、それぞれの環境に適するような異なる形態をしている。
それぞれが棲み分けた環境に適応し、新たな亜種が形成される。つまり、動的環境や静的環境を、すこしずつずらす、グラジュエーション化することで、変種(新たな亜種)が生まれ、多様化する、と彼は見た。
[縦横の変化]
棲み分けは横への変化(変種)を生み出す。この説によって、縦への変化(進化)を説明するのは困難だろう。縦への変化(進化)を促すには、酸素の発生とか、巨大な隕石の落下、新たな環境の大規模な創成など、地球規模的な変化が必要なのではないかと感じられる。
[小さな進化と大きな進化]
「棲み分け理論」が示すような、小さな進化は、必ずしも環境変化を伴わずとも、生まれ得るのではないかと思える。しかし、大きな変化(進化)は明快な環境変化を伴うと考えられる。と言うよりも、大きな環境変化が、必然的に進化を促すといえる。