進化の法則を知れば先が読める

文化文明も、それ以外の全て、生物無生物にかかわらず、つまり、有形無形にもかかわらず、進化するものだと、私は考えている。 そこで、今回、特に、無形の文化文明の進化を提示したいと思い、この本を描き上げた。

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その五)

[赤ん坊の脳]
だから、人間においても、赤ん坊の段階では、誕生前からすでに大脳新皮質が存在していても、その部位には主役となって判断できるほどの体験知(後天的情報)が蓄積されていない。つまり、赤ん坊段階での大脳新皮質は空っぽの貯金箱にすぎない。
[爬虫類脳から機能する]
故に、赤ん坊の場合には、生得的知に従って働く爬虫類脳が主役となる段階から人生をスタートすることになる。そして、後天的な体験によって獲得された知が加味された本能に従って働く旧哺乳類脳や、後天的な体験がほとんどを占める新哺乳類脳が順次主役に立つ。つまり、大脳辺縁系で発生する欲求や情動を、大脳新皮質の知性や理性がコントロールする。それにはたくさんの経験を必要とする。
[本能からの離脱度]
旧哺乳類脳は、自由度がかなり低い(本能的知から離れられない)が、新哺乳類脳は、圧倒的な自由度を誇る。この圧倒的な自由度が、動物的本能からは、考えられないような、行動をしでかす。本能の統制から解放された新哺乳類脳は、あらゆる非道、残虐なこともやってのける。天使にも悪魔にもなれる脳部位である。
[内装は下から順に]
なお、幼い頃に、感情や快・不快の価値判断的な体験(旧哺乳類脳に蓄積)をあまり積まずに、早期に知的体験(新哺乳類脳に蓄積)を積み過ぎると、冷たい知的(理詰め)な大人になる可能性も高い。諸刃の剣である。

本能の力(新潮新書)

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