進化の法則を知れば先が読める

文化文明も、それ以外の全て、生物無生物にかかわらず、つまり、有形無形にもかかわらず、進化するものだと、私は考えている。 そこで、今回、特に、無形の文化文明の進化を提示したいと思い、この本を描き上げた。

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その十)

[熟年男女の行動力]
情報提供者たちよ、若者にばかり焦点を当てずに、熟年男女の行動力にも目を向けよう。世界に目をければ、先進諸国には、そのような暇とお金を持て余す熟年男女であふれ返っていますよ。
[草刈り場の形成]
次の主役の登場を早める最大の手段は、今までの主役が退くことによる、規制緩和(草刈り場の形成)である。また、新しい主役たちに、新しい行動の場を提供しよう。
[日本の経済環境]
今の日本で、円高(輸入に有利)という環境から、円安(輸出に有利)という環境へと大きく環境が転換したことで、主役の交代があるかもしれない。

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その九)

[巨大恐竜のような大企業]
という点で、日本でも、今まで主役を張っていたが、新しく生まれ出た環境、移り行った環境に変貌適応できていない、巨大恐竜のような大企業には、早く主役の座を退いてもらいたいものである。脇からの突如としての茶々入れになったが。
[ものよりも体験、ものよりも思い出]
追加的に言えば、すでに、消費者である、特に先進諸国の消費者の心模様が大きく変化しつつある。ものよりも体験、ものよりも思い出、の時代である。ものはそれを高めてくれる脇役である。先進諸国では、ものよりも、主役の座に着いた体験・思い出、など心や感情を重要視する時代に入っている。
[実体験する]
テレビや雑誌やネットで、東にすばらしいもの(例えば、高原のお花畑)を見れば、それを実体験したくなる。西に美味しいケーキがあると聞けば、それを五感したくなる。南にライブがあると知れば、それに没入したくなる。素晴らしい体験を求めて、東奔西走する。
[韓流支える人々]
それの走りが韓流ではなかったか。子育てから開放された、戦後世代の女性たち。次には、仕事から開放された男ども。彼女ら、彼ら(私もその一人である)が、ものよりも体験・思い出の主役たちである。
彼らは、自分達の親世代とは違って、孫の守という祖父母の役割に甘んじてなどいない。元気ハツラツの活動的な熟年男女である。

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その八)

[恐竜の絶滅]
ほぼ完全に海から開放された爬虫類である恐竜が、不幸な出来事によって滅ぶよりももっと以前から、次の主役(猿)は、裏で着々と準備を進めていて、機会をうががっていたのである。
[恐竜絶滅の原因]
恐竜に降って湧いた不幸な出来事とは、直径10キロほどの隕石が、メキシコのユカタン半島近くに衝突したことである。その結果、巻き上げられた大量のチリ(細かな砂など)は、成層圏にまで舞い上がり太陽光を遮り“衝突の冬”が訪れた。その10年ほど続いた“冬”の間に植物は枯れ、あたかもドミノ倒しのように、続いて、それをエネルギー源とする草食恐竜が死に絶え、その食物連鎖上にあった肉食恐竜も絶滅していった。
[エネルギ流入の途絶]
これは、散逸構造を維持していた、ある種のエネルギ(この例では、植物、更にはその前の太陽光)の流入が途絶えたために、ドミノ的に、構造が崩壊したともみなせる。つまり、散逸構造オートポイエーシスシステム、生態系の崩壊である。
[草刈り場]
恐竜の後に現れた主役の猿の生育環境は、森(世界の森林面積は約40.3億ヘクタールで、全陸地面積の約31%を占める)であり、恐竜のそれは、草原であった。恐竜の絶滅によって、主役の去った草原は、次の主役の座を狙うものたちにとって、草刈り場となった。
不毛の地にまず舞い降りるのは通常植物である。その後、その植物を求めて、動物たち(草食動物、続いて肉食動物)が入り込んでくる。

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その七)

[生存環境の前進]
生存環境は、定常的な変化しないものではなく、進化論がいうように、変異を受け入れて、徐々に変化していく。
大きな視点から言えば、海だけだった生存域は、陸地が生存可能になって、水陸を行き来する、水辺の両生類が、進化的に主役へと変遷していく。
更には、その後に、水辺を必要とはせず、環境的に優位に立てる、純粋な陸生生物である爬虫類が、主役へと躍進する。このように、生存環境が創造変化して行く。
[徐々に変化、進化]
どんな個体(動植物共に)も、他との(互いに相手の環境になり合う生態系的な)関係を持たずに存在することは不可能なので、にじりながら進むかのように、徐々に変化、進化を遂げていかねばならない。
[新しい主役に躍り出るもの]
自分を作り替えていくことで、今まで属していた系(生態系)を離れての存在が可能となり、新しく誕生した環境に、飛び込んで、適合したものが、新しい主役に躍り出ていく。このようにして、より大きな広い環境が創造されて行く。

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その六)

[共進化]
“共進化”とは、一つの生物学的要因の変化が引き金となって、別のそれに関連する生物学的要因が変化すること、である。持ちつ持たれつの相互環境的関係ならば、相手が変化すれば、こちらも自動的に変化せざるを得ない。一方的影響は有り得ない。
[縁起の法]
仏教には、 釈迦が悟ったという”縁起の法”という教えがある。「これあればかれあり、これ生ずるが故にかれ生ず、これなければかれなし、これ滅するが故にかれ滅す」。つまり、全ては相互に関連しあっているということである。
[無為自然とは]
人間も、自然によって自律的に創造されたものである。人間も、周りの環境と、自己組織化によって生まれる定常的な構造の一部になり得る存在である。老子の説く無為自然とは、このようなことをいうのではないだろうか。なお、”無為自然”とは、人の手を加えないで、何もせずあるがままにまかせることである。散逸構造の流れに乗る、 オートポイエーシスシステムの中に身を委ねる、生態系の中に身を委ねる、自然法爾する、ことだろう。だのに、人間だけが、自然な流れにあらがってジタバタしている存在のように見えてしまう。

現代宇宙論―時空と物質の共進化

現代宇宙論―時空と物質の共進化

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その五)

[自然は自律的に創造]
自然は、車を作ることはできないが、車よりももっと複雑なカエルを創造することができた。しかも、自然に、自己組織化によって、自律的に。なお、自律とは、他からの支配や制約や助力などを受けずに、自分自身で立てた規範(システム)に従って行動することで、他律、依存とは逆の意味である。
自然は、一つのまとまったシステムを自律的に創造できる存在である。
散逸構造論がいうように、宇宙では、エネルギーの流れが一旦できると、その流れが途絶えない限り、 自己組織化によって定常的な構造が生まれ、維持されるのだろう。
[相互環境性]
相手は自分にとっての環境である、と同時に、自分は相手にとっての環境でもある。例えば、草食動物は、草を食べるが、フンをすることで、草に栄養を与えている。また、死骸になることで、土に滋養分となる。
つまり、両者は、円環的な持ちつ持たれつの関係にある。お互いがお互いの(動的、静的)環境になり合っている。
この関係、エネルギーの流れ(食物連鎖)が続く限り、生態系が定常維持されるのだろう。

混沌からの秩序

混沌からの秩序

現代物理学叢書 散逸構造とカオス (岩波オンデマンドブックス)

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  • 作者:森 肇,蔵本 由紀
  • 発売日: 2017/07/11
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その四)

[自給自足とは]
自給自足とは、生活に必要な物資をすべて自ら手に入れる生活のあり方であり、生物はすべて自給自足である、という。自給自足といっても、他からエネルギーを得ていないという意味ではなく、エネルギーを自分で(自力で)獲得しているという意味である。
車のように、車自身がエネルギーを自分で獲得しないで、人間の手で補われる存在は、自給していなく依存的だという。
例えば、地球自身は、太陽から得るエネルギーの合計と宇宙に放出するエネルギーの合計は等しく、均衡が保たれている。つまり、 定常的な構造、自給自足的散逸構造体である。
生態系も、オートポイエーシス的システムも、散逸構造も、それらに共通する点は、自己組織化によって生まれる定常的な構造、である。つまり、自給自足することであろう。
[生物と無生物の境界線]
生物も、無生物も、互いに関係を保ちながら、一つにまとまった、系として、活動する存在である。となれば、生物だとか、無生物だとか、システムだとか、と区別する意味が薄れてくのではないか。我々は、とかくどれかに焦点を合わせて、そこを視点に放射状にものを捉える傾向があるようだ。

情報と自己組織化

情報と自己組織化

自己組織化マップ

自己組織化マップ

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その三)

[エントロピー増大の法則]
しかしながら、”エントロピー増大の法則”はいう。その法則では、自然界では、常に、エントロピー(乱雑さ、無秩序度)が小さい方から大きいへという方向に進む、という。つまり、これは、自然は必ず秩序から無秩序へという方向に進む、定常から散逸する方向へと進む、ということを言い表す。
しかし、実際には、自然界では、その法則に逆らうような現象がいっぱい起きている。これをどう解釈すればいいのだろうか。
[台風は散逸構造]
台風が散逸構造に該当する。台風発生前には、無定型に、高温の海面から水蒸気が蒸発する。その水蒸気が放出する時に生じる潜熱が台風を生み出す原動力、エネルギー源である。また、軽くなった空気は上昇する。すると、地上付近では周囲から湿った空気が中心に向かい上昇し、さらに熱を放出しエネルギーを与える。このような条件や動きが重なり合ってあたかも一つのシステムを形成するかのような定常的な流れとなり、台風は発達して行く。そして上陸して、エネルギーの供給が止まると、弱まり、やがて散逸消滅する。台風は、散逸構造であると共に、オートポイエーシス的システムでもあると言える。
散逸構造―自己秩序形成の物理学的基礎
現代熱力学―熱機関から散逸構造へ
混沌からの秩序
自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)
現代物理学叢書 散逸構造とカオス (岩波オンデマンドブックス)

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その二)

[主体のあるなし]
要するに、環境には、ある主体を取り巻くものという意味合いが強いが、他方、生態系は、相互につながったまとまりという集団志向的な意味を表す。この違いはとても大きい。
[オートポイエーシス的システム]
ある主体から見た環境という視点からは見えてこないが、生態系という一つのつながりやまとまりで見れば、「オートポイエーシス」的システムを思い浮かべる。
例えば、細胞は、核酸酵素代謝物のような様々な生化学的な構成要素から成り立つ。そしてそれぞれが細胞内の組織化された構造を作り上げている。それと同時に、物質とエネルギーの外部との交換に基づいて作動しているこれらの構造は、その構造を維持しつづけるようにその構成要素を絶えず生成または分解している。
[生態系はオートポイエーシス]
構造やそれの構成要素の方に目を向けないで、そこで働いている作用(機能、働き)の方取り出してオートポイエーシスという。生態系は、オートポイエーシス(構造を維持しつづけるようにその構成要素を絶えず生成または分解する働き)という視点から見る。
[散逸構造とは]
そのような構造を、オートポイエーシス的システムという。これはまた、散逸構造ともよく似ている。”散逸構造”とは、エネルギーが散逸(ばらばらになって行方がわからなくなる)していく流れの中に自己組織化によって生まれる、「定常的な構造」をいう。散逸という無定型、無方向な大きな流れ(動き)の中に、定常的な構造、流れ、動きが出現する。宇宙全体は散逸的流れであるが、各所に定常的な動き(構造)が出現している。
散逸構造―自己秩序形成の物理学的基礎
現代熱力学―熱機関から散逸構造へ
混沌からの秩序
自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)
現代物理学叢書 散逸構造とカオス (岩波オンデマンドブックス)
存在から発展へ【新装版】――物理科学における時間と多様性
プリゴジンの考えてきたこと (岩波科学ライブラリー (67))
構造・安定性・ゆらぎ 【新装版】――その熱力学的理論

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その一)

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造
[環境とは]
“環境”とは、辞書的な定義では、主体(人、生物)を取り巻く家庭・社会・自然などの外的な事の総体である。ではあるが、狭義においては、その中で人や生物に何らかの影響を与えるものだけを指す。 つまり、影響度においては、重層的である。
[生態系とは]
ある程度閉じた、一定の区域に存在する生物と、それを取り巻く非生物的環境を、一つの系とみなし、”生態系”という。”系”とは、漢字の中に糸があることからうかがえるように、ある関係をもって、一つのつながりやまとまりをなすもの、をいう。
[環境と生態系の違い]
ところで、環境と生態系の違いは何だろうか。環境といえば、ある主体から見た環境である。環境の”環”は、円を意味し、環境という意味を示す英語は、”environment”であるが、その動詞形”environ”は”包囲する”という意味である。
それに対して、生態系とは、相互に関係する一つのつながりやまとまり、という組織(システム)を指し示す。イメージ的には、毛糸玉であろうか。
新版 絵でわかる生態系のしくみ (KS絵でわかるシリーズ)
プラネットアース: イラストで学ぶ生態系のしくみ
生物多様性 「私」から考える進化・遺伝・生態系 (中公新書)