進化の法則を知れば先が読める

文化文明も、それ以外の全て、生物無生物にかかわらず、つまり、有形無形にもかかわらず、進化するものだと、私は考えている。 そこで、今回、特に、無形の文化文明の進化を提示したいと思い、この本を描き上げた。

2020-01-01から1年間の記事一覧

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その三)

[アヘン戦争] 中国でのアヘン戦争が挙げられる。だが、アヘン戦争自体は、宗教の衰退と直接関係はない。ただ東洋(文化)の西洋(文化)への敗北を象徴する出来事である。日本では、それに匹敵するのは、黒船の来航であろう。アヘン戦争や黒船の来航は、西洋の科…

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その二)

[その頃日本では] 日本列島では、2〜3世紀に存在したとされる国のひとつ、邪馬台国(約30の国からなる日本の都)は、卑弥呼(呪術を司る巫女のような人物)が治める女王国であった。この状況も、知の中心に宗教があることを示している。 [前期と後期の宗教] 宗教…

第十章:宗教を中心とした文明文化 (その一)

第十章:宗教を中心とした文明文化 これまで(第九章で)は人類以前の知を見てきたが、ここからは、人類にとっての主役となる知の交代劇を見ていきたい。 [仏教の誕生] インドでは、仏教が誕生した背景に、従来の盲信的な原始的宗教から脱しようとした、ことが…

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その五)

[赤ん坊の脳] だから、人間においても、赤ん坊の段階では、誕生前からすでに大脳新皮質が存在していても、その部位には主役となって判断できるほどの体験知(後天的情報)が蓄積されていない。つまり、赤ん坊段階での大脳新皮質は空っぽの貯金箱にすぎない。 […

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その四)

[大脳新皮質が担う文明文化] この本のテーマである文明文化を創造する能力は、主にこの大脳新皮質が担う。人間の場合には、大脳新皮質が主役になることができるが、哺乳動物である犬や猫では、大脳新皮質が主役の座を奪うことができない。それは、大脳新皮質…

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その二)

[道徳とは] では、道徳とは一体何なのだろうか。それは、大きな集団である社会や共同体において、より健全で快適な共同生活を送るために、その構成員の大多数によって認知共有され、守るべき、あるいは、実行されるべきと考えられている態度の規範、行動の指…

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その一)

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 [宗教中心の文明文化] 釈迦は紀元前5世紀頃に、キリストは紀元元年(?)に誕生した。その頃に、宗教(キリスト教、仏教・儒教など)が中心の文明文化が生み出された。世界を解釈する方法・手段として、宗教教義が誕生していった。ま…

第九章:文化へ流れ込む知の源泉 (その三)

[脳の三層構造] アメリカのポール・マクリーンは、”脳の三層構造説”を唱えた。人間の脳は、爬虫類脳→旧哺乳類脳→新哺乳類の順番で進化し、機能を複雑化させ高度化させてきた、という。 注)しかしながら、脳科学的には、彼の説は厳密なモデルとしての正確性は…

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その六)

[時間を持て余す犬や猫] 食料獲得をしないので、食料生産外の時間を持て余す飼い犬や飼い猫でさえ、それらを文化的活動へと振り向けることはない。昼寝を貪り続けている。でも、しゃべる犬や猫の存在が、Youtubeにたくさんアップされているが。 [文化的活動…

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その五)

[食料生産外の時間が発生] 農耕牧畜によって、全員が自然物(食料)生産に従事しなくてもよいほどに、つまり、余剰が生み出されて、食料生産外の時間(文化的活動)が発生した。とは言え、文化の定義が、人類が自らの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体、…

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その四)

[質とは] ところで、質とは、中身・内容を問題にすることである。例えば、睡眠に関して、時間の長さとか回数という量的な面と、ぐっすり眠ったとか、うとうとしただけとかの眠りの内容の良さを問題にするときに、質という言葉を使う。 [質の差] 例えば、カエ…

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その三)

[自然物生産] 農耕が開始されたのは、新石器時代(紀元前8500年頃)からである。新石器時代には、農耕や牧畜の開始によって社会構造が変化し、文明の発達が始まった。農耕や牧畜とによって、その日暮らし的生活から、余剰の発生、余裕・余暇の発生が生じた。 […

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その二)

[生物の絶対必要条件] 生物の場合でも、さまざまな有形無形のものが、一つの系としてまとまっていたものである。ただ生物の絶対必要条件は、細胞の存在である。細胞があるものには、命があるとみなされる。人間が勝手に決めたものだろうが。 [生死を超えると…

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す (その一)

第八章:余剰の発生が文化文明を生み出す [人間の文化文明] ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、やっと、ここからが、本来のテーマである、”人間の文化文明の進化論的栄枯盛衰”を見て行きたい。まずは、余剰について考えたい。 [自然物(動植物)採取] 散…

第七章:単純から複雑への変化を指し示す進化論 (その三)

[進化は上への変化] “進化”とは、今まで例示で示してきたように、例えば、情報の伝達手段が、声から紙へと主役が変遷してゆく(“階層的な)上への変化”、上へ積み上げてゆく変化である。 [徐々なる変遷] もちろん、音声から、一気に紙へと変化(進化)したわけで…

第七章:単純から複雑への変化を指し示す進化論 (その二)

[スペンサーの進化論] イギリスの哲学者、社会学者、倫理学者、スペンサーは、進化を自然(宇宙、生物)のみならず、人間の社会、文化、宗教をも貫く第一原理であると考えた。芸術作品も宗教の形態も何もかもすべて単純から複雑への変化として捉える。 [スペン…

第七章:単純から複雑への変化を指し示す進化論 (その一)

第七章:単純から複雑への変化を指し示す進化論 [私のいう進化論とは] なお、私が今まで使ってきた進化(論)とは、厳密な科学的用語ではなく、環境の変化によって、より高度な、より複雑な、より要素が豊富な、方法・手段を用いる(有形無形の)形式へと、主役が…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その十)

[熟年男女の行動力] 情報提供者たちよ、若者にばかり焦点を当てずに、熟年男女の行動力にも目を向けよう。世界に目をければ、先進諸国には、そのような暇とお金を持て余す熟年男女であふれ返っていますよ。 [草刈り場の形成] 次の主役の登場を早める最大の手…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その九)

[巨大恐竜のような大企業] という点で、日本でも、今まで主役を張っていたが、新しく生まれ出た環境、移り行った環境に変貌適応できていない、巨大恐竜のような大企業には、早く主役の座を退いてもらいたいものである。脇からの突如としての茶々入れになった…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その八)

[恐竜の絶滅] ほぼ完全に海から開放された爬虫類である恐竜が、不幸な出来事によって滅ぶよりももっと以前から、次の主役(猿)は、裏で着々と準備を進めていて、機会をうががっていたのである。 [恐竜絶滅の原因] 恐竜に降って湧いた不幸な出来事とは、直径1…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その七)

[生存環境の前進] 生存環境は、定常的な変化しないものではなく、進化論がいうように、変異を受け入れて、徐々に変化していく。 大きな視点から言えば、海だけだった生存域は、陸地が生存可能になって、水陸を行き来する、水辺の両生類が、進化的に主役へと…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その六)

[共進化] “共進化”とは、一つの生物学的要因の変化が引き金となって、別のそれに関連する生物学的要因が変化すること、である。持ちつ持たれつの相互環境的関係ならば、相手が変化すれば、こちらも自動的に変化せざるを得ない。一方的影響は有り得ない。 [縁…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その五)

[自然は自律的に創造] 自然は、車を作ることはできないが、車よりももっと複雑なカエルを創造することができた。しかも、自然に、自己組織化によって、自律的に。なお、自律とは、他からの支配や制約や助力などを受けずに、自分自身で立てた規範(システム)に…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その四)

[自給自足とは] 自給自足とは、生活に必要な物資をすべて自ら手に入れる生活のあり方であり、生物はすべて自給自足である、という。自給自足といっても、他からエネルギーを得ていないという意味ではなく、エネルギーを自分で(自力で)獲得しているという意味…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その三)

[エントロピー増大の法則] しかしながら、”エントロピー増大の法則”はいう。その法則では、自然界では、常に、エントロピー(乱雑さ、無秩序度)が小さい方から大きいへという方向に進む、という。つまり、これは、自然は必ず秩序から無秩序へという方向に進む…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その二)

[主体のあるなし] 要するに、環境には、ある主体を取り巻くものという意味合いが強いが、他方、生態系は、相互につながったまとまりという集団志向的な意味を表す。この違いはとても大きい。 [オートポイエーシス的システム] ある主体から見た環境という視点…

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 (その一)

第六章:働き・作用から見れば、生態系、散逸構造 [環境とは] “環境”とは、辞書的な定義では、主体(人、生物)を取り巻く家庭・社会・自然などの外的な事の総体である。ではあるが、狭義においては、その中で人や生物に何らかの影響を与えるものだけを指す。 つま…

第五章:環境と生物は相互に関係し合う (その三)

[ガイア理論とは] ジェームズ・ラブロックによって提唱された、”ガイア理論”は、地球というシステム全体を見据えた理論である。 地球があたかもひとつの生命体のように自己調節システムを備えている、という。 また、地球と生物が相互に関係し合い環境を作り…

第五章:環境と生物は相互に関係し合う (その二)

[棲み分け理論] 日本の生態学者、文化人類学者今西錦司は、「棲み分け理論」を提唱した。具体例で示せば、カゲロウ類の幼虫は渓流に棲むが、種によって棲む環境が異なると同時に、それぞれの環境に適するような異なる形態をしている。 それぞれが棲み分けた環…

第五章:環境と生物は相互に関係し合う (その一)

第五章:環境と生物は相互に関係し合う [二種類の環境] 環境には、動的環境(主なものは、エサと敵)と、静的環境(気候、水の有無などの生活基盤)とがある。 動植物は、同じ場所(静的環境)に生存しても、種によって、動的環境は大きく異る。つまり、生態系が異…